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「2020年 大学入試改革」の本棚

※このブログ記事の内容は、各書籍に掲載されている(=刊行時点の)情報を元にしています。

 

大学入試が大きく変わる予定であることは、既に広く知らされている。

 

それがどのような目的と背景で行われようとしているのかを調査、海外の事例を含めて取材し紹介しているのが読売新聞教育部『大学入試改革』(中央抗論新社 2016年7月)だ。

 

P117では長期的な経緯が書かれている。

 

まず2013年10月に教育再生実行会議により2020年を目処に現行のセンター試験を以下のようなものにすることを提言した。

「1発試験のワンチャンス型」ではなく複数回の受験を可能にすること。

単純な点数の1点刻みで合否が分かれることがないようにすること。

暗記型ではなく分析・問題解決能力を測るテストにすることなどだ。

 

さらに約半年後の2014年2月に文科省原案として、以下のようなことが中教審に示された。

複数回の受験は高校3年生の12月以降に行うこと。

英語試験はTOEFLなどの外部試験利用を検討すること。

1点刻みではなく段階・グループ別の評価を用いること。

 

その約1年後の2014年12月には中教審答申が出たが、複数回実施の時期については高校や大学など関係者を含めて協議となり、高校3年生の12月以降という記述は消えている。

一方、教科については複数の教科・科目をまたいだ出題を行う提言がされた。

またCBT(Computer Based Test、パソコンなど情報端末を使って受験するテスト)の導入を検討するとされた。

 

そして、2016年3月に高大接続システム改革会議最終報告として、以下のような方針が決まった。

まず複数回実施については引き続き検討となっている。

試験は現行のセンター試験マークシート方式から、短文の記述式や英語スピーキングなどの出題を検討するとしている。

テスト結果については、合計点数だけでなく科目の各領域、問いごとの解答状況を大学に提供するとしている。

そして導入は2020年度とするものの、大きな改革は2024年度からとなった。

2018年にはプレテストを実施するという。

 

このような長い議論を経ているものの、実際に受験するのは、2020年試験は2017年度時点の高校1年生、2024年試験は小学5年生からで、教師や生徒、保護者などはすでに影響を受けることになる。

 

本書では以上のような大学入試改革の問題意識や経緯が解説されているだけではなく、全体の4章のうち2章分がアメリカ、韓国、台湾の大学入試の紹介や比較に当てられている。

それらが日本の入試改革のモデルでもあるので、実際に読んでいただきたい。

 

ところで、大学入試改革に伴って、良くも悪くも「志望大学に入る」ことを重視した高校の勉強や、そこに至るまでの小学校からの勉強も、大きく変化せざるを得なくなる。

それについての本が山内太地・本間正人『高大接続改革』(ちくま新書2016年10月)だ。

 

 

本書では2016年3月の高大接続システム改革会議最終報告を元に大学入試改革の議論や予定が詳しく解説されていると共に、影響を受ける小学校から高校までの教育についても、アクティブラーニングを軸として述べられている。

 

一方、受験生でなく教員の立場や課題について書かれた本もある。

 

 

「もし、あなたがザビエルだったとしたら、布教のために何をしますか。具体的な根拠とともに400字以内で説明しなさい」

 

これは、石川一郎『2020年からの教師問題』(ベスト新書)のオビに書かれている入試改革後に予想される例題だ。

これまでのセンター試験とどこが違うかというと、マークシート方式から記述式になっているのはもちろん、単に「ザビエルという名前を知っている」だけでは答えられない。

少なくとも、ザビエルがキリスト教布教のために日本に来たことを知っていないと答えられない。

またおよその年代を知らないと「電話で勧誘する」といった答えを書いてしまうかもしれない。

この問いへの回答には、そういったこれまでのテストで必要だった「知識」を前提とし、さらに布教という「問題解決」への対応力まで問われていることになる。 

 

本書の問題提起は、現在の教師はこういった出題への回答に対するノウハウがないことだ。

つまり生徒だけでなく教師も「アクティブ・ラーナー」として学び、対応していく必要がある。

ところがこれまでのノウハウを蓄積しているベテラン教師ほど、大学入試改革による出題方式変更への対応に消極的だという。

 

新技術や流行により、既に持っている知識やノウハウが陳腐化することは多くの業界に起こっているが、教育という公的な分野にもそうした変化が及んでおり、しかも2017年時点の小学5年生や高校1年生はその変化に直面することになる。

その対応が教師や保護者に求められていることを指摘し、心構えを説いているのが本書だ。

 

また最終報告でも未定の事項は多く、今後も継続的な情報収集が必要だろう。