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堀之内新之介『感情で釣られる人々 なぜ理性は負け続けるのか』

 

 本書は新書ながら、数十冊の本の内容紹介・引用や、参考文献の提示がされている。それらをそろえるだけで、1つの本棚1段が埋まってしまうだろう。

著者は政治社会学者で、そこに行動経済学の知見を用いつつ「感情の動員」という一貫したテーマで「労働」→「消費(マーケティング)」→「政治」へと、身近な話題から順に読みやすく書かれているのが特徴に思える。

例えば冒頭では、ハリー・G・フランクファート『ウンコな議論』を用いて、私たちは感情的になること、全く感情的にならないなんてことは難しいこと、ならば感情的になることやあまり深く考えずに行動してしまうことを前提にするしかない。

それを自覚しなければ私たちは「ウンコのように流されてしま」う、といったユーモアある表現がされている。(P29)

 

 

本書のキーワードの1つは行動経済学における「NUDGE(ナッジ)」という概念で、それは本書の『感情に釣られる人々』というタイトルで実践されている。なので、内容や、紹介されている文献について詳しく触れるのは無粋というか、著者の意図を台無しにしてしまうだろう。

本文にはイギリスのEU離脱決定後やトランプ大統領就任後に書かれたと思わせる部分があるが、本書が刊行されたのはそれ以前の2016年6月であることは注目したい。

内容紹介をあまりしない代わりに、松村真宏『仕掛学』という本を合わせて紹介したい。

 

 

なぜこの本を紹介するかというと、『感情で釣られる人々』『仕掛学』ともに、行動経済学における「NUDGE」の実用例として、男性小便器で小便が外に飛び散らないための「小便を狙う印」(女性には伝わらないと思う)が紹介されているからだ。

つまり、今回の記事の3冊は「トイレつながり」ということになる。